最新 2024年春季号

2024年春季号 NO.274
〈MICROSCOPIC&MACROSCOPIC
  風の中なる紫  森 たま江
〈15首詠〉    宮崎 弘・矢島由美子
〈山下和夫の歌〉 1995年『埴』8月号より 
〈作品Ⅰ㋑〉 小原起久子・宮澤 燁
       森 たま江・ほか
〈作品Ⅰ㋺〉 相良 峻・石井恵美子・
       赤石美穂・ほか
〈作品Ⅰ㋩〉 天田勝元・伊藤由美子・
       大場ヤス子・ほか
一首鑑賞   江原幸子・菊池悦子
ONE MORE ROOM 小原起久子
   山下和夫著 『現代短歌作品解析Ⅲ』より
    38【飛躍とは】
一首鑑賞   小原起久子・堀江良子
プログレス賞の紹介 小原起久子
第24回プログレス賞受賞作品
『青春の襞』佐藤和子
同作品評 相良 峻 
同作品評 佐藤真理子
〈作品Ⅱ〉  今井洋一・小曾根昌子・
〈会友〉   板垣志津子・井出尭之・ほか
〈まほろば集〉清水静子・萩原教子
西村英子さんへの追悼 小原起久子
 宮澤 燁・小曾根昌子・大川紀美枝
 高橋眞砂江・中山幸枝
〈題詠〉衣類
 﨑田ユミ・矢島由美子・佐藤香林・坪井 功
 今井洋一・板垣志津子・大場ヤス子
短歌の作り方覚書 23
 韻律で醸し出す抒情 堀江良子 
ESSAY  免許更新 茂木惠二
玉葉和歌集(抄)24      時緒翔子
『炎の女たち』古代篇(48) 山下和夫著
春季号作品評 
 作品Ⅰ評         堀江良子
 15首詠・まほろば集評  赤石美穂
 作品Ⅱ・題詠評      藤巻みや子
ばうんど
編集後記
表紙絵 山下和夫

会員作品(抄)
 ふりがなは作者による。原文はルビ形式。
【15首詠】
急流をのぼるが定め若鮎は堰の段差を
幾度もジャンプ       宮崎弘 
春蝉のひとつが啼けばたちまちに合唱となり
われを揺るがす       同
「三国志」の連載漫画本棚にグラデーションに
色褪せてゆく        矢島由美子 
赤と青コントラストは鮮やかに
人工芝にゴールを目指す   同
【山下和夫の歌】 1995年『埴』8月号 より
生きいそがねば散りいそがざる垂れ藤のむ
らさきいろの雨ぞ 享けいる 山下和夫 
知らぬ間に去にし吉凶まなかいに蒼々と
あおすじあげは漂う     同
【作品Ⅰ㋑
変わらぬ笑みは要求される一年中ほとんど
忘れられていた雛人形    小原起久子
らんるらんるらんるまとえどぼろぼろと
襤褸にしてはならない九条  宮澤 燁
じっとしていれば静かに消えゆく『時』
置いていかれし『老い』に気づかず 森たま江 
辿り着く界やも知れぬ雷過ぎて眩しき空に
かかりたる虹        牧口靜江
木には木の無念もあるや年老いたソメイヨシノは
開花が早い         堀江良子
北窓にガーゼのような蜘蛛の巣かかり今日もまだ
なにもかかっていない    江原幸子
笹の葉の短冊写メール送りたり孫のバスケの
勝利を祈る         佐藤和子
初春の窓より射し込む光浴び今日一日の
出会いのときめき      石川ひろ
傷負わせられしとき殺してもよし 人喰い熊も
戦地のヒトも        元井弘幸
【作品Ⅰ㋺】
日焼けして葉枯れた紫陽花 きみどりの
新芽を吹いた 平和な国土  相良 峻
土砂災害警戒区域の杭ありて母の生家は
屋根に草生ゆ        石井恵美子
空き家の防犯カメラの射程内そろりそろりと
野良猫よぎる        赤石美穂
看護師の手を払いのけトイレまでふらふら歩く
老いのプライド       今井五郎
桜若葉の陰に鳥たちの声ひびいて
今朝の庭は森        佐藤真理子
【作品Ⅰ㋩
小父さんと呼びし村人又一人儚くなりぬ
暑き夏の日         天田勝元
秀子ちゃんよりの年賀状切手シート当たって居たよ
この福を半分おすそ分けするね
              伊藤由美子
五十果を数えてあまる木瓜がなりりんごの形
味なし香りなし       大場ヤス子
面影と皿を残して帰り行く青嵐のごとき
息子の一家         菊池悦子
橘の花の香を見上ぐれば古代の神秘の
ベールに包まる       﨑田ユミ
若き日に馬鹿にして来し事ひとつ
ペットボトルの蓋 いまあかず 佐藤香林
ヒョウモン蝶の蛹はメタルの鎧着て
パンジーの葉にきらめいており 反町光子
数日間見えなくなれば落ち着かずあれやこれやと
深く黙する          坪井 功
樹にならん フィトンチッドの息吐かん
ぽとぽと朝は霧を落とさん   藤巻みや子
われ嫌う梅雨空に濡れ樹々たちは一日二日〈ひとひ
ふたひ〉と緑濃くする     茂木惠二
【第24回プログレス賞受賞作品】
青春の襞 佐藤和子   別頁全首掲載
【作品Ⅱ】
腰痛のリハビリの登山十月(とつき)ぶりの
リュックの中に明日を詰める  今井洋一
暑さ避け見ぬもの清しの平穏を一瞬断たれし
庭は草むら          小曾根昌子
【会友】
十五夜の月の出を待つ公園の白詰草の丈は短い
                板垣志津子
晴天の空を見上げて眠りたい午後ニュースは
「コロナ」           井出尭之
今時の流行(はやり)のグッズ虫よけの・
鬼蜻蜓(おにやんま)・連れ帰省する孫 
               大川紀美枝
長年の夢が叶いて上高地梓川のほとりに子猿がたわむる
               川西富佐子
菩提寺の墓前に足を踏みいれば烟の中に
義姉の影見る         土屋明美
雑草に追われおいこせ我が体力夏の暑さを
追いかけて行く        髙橋眞砂江
わが庭の片隅に咲く一面の紫蘭がことしも
色どり添える         中山幸枝
夢にきた亡母が裸足で庭に立ち負んぶをせがんだ
もうすぐ命日         牧野八重子 
【まほろば集】
暁に赤く連なる烏瓜人魚の作るローソクの色
               清水静子 
今日一日無事に過ごしたお祝いに菓子をほおばる
毎夜の儀式          萩原教子
【題詠】衣類 3首 
想い出のスカートぴたりと友に合う履いてぐるぐる
煌めくスカート        﨑田ユミ 
亡母の衣類まとめてゴミ袋へ冬日に輝く
母の一生(ひとよ)      矢島由美子 
紺色のダッフルコートいつよりか冬来たりなば
真先に着る          佐藤香林 
むせつかえシャツに染みをつくりがちに嚥下機能化と
愕然とする          坪井 功 
スーツ捨てガランとなりしクローゼット赤いポロシャツ
幅きかせおり         今井洋一 
学校のくじ引きで買ひしスリップで登校するも
何も言はれず         板垣志津子 
わたくしのアロハは絹のチャイナ衿パイナップルが
なってて素敵         大場ヤス子